モントリオール留学#4
4月3日ののブログは消えた。
昨日の夜はなぜかずっと他のホームステイしてる人がみんないなくて、めちゃくちゃに孤独だった。孤立した、と思った。もともと日本でも友達が多い方ではないので、またここでもこうなってしまうのか、と思った。
別に友達を作りにきたわけではないけれど、やっぱり友達がいないと楽しくない。
メソメソした気持ちのまま学校に行こうとして、あ、やってしまった、と気づいた。
鍵が、ない。
スーツケースの中にも上着のポケットにもどこにもない。昨日の晩新しくした鍵をマザーからもらったばかりなのに!絶対になくしたなんて言えない!
幸いなくした場所は確実に家の中だし、というか絶対に自分の部屋だし、ということでずっと探していた。一通り探してもなくて、ベッドに座って、ああなんて情けないんだろう、と思った。
鍵を壊すし無くす、クレジットカードも問題ばかり起こるし、授業はついていけない、まぁこれは根性でなんとかするんだけど……言葉がわからない、友達はできない。
とりあえず前回壊した鍵の保険について確認したくて保険会社に電話をかけた。
涙が溢れてきた。しまいには涙声になって
「鍵を壊してしまったんですけど……。」
と言っていた。
壊した鍵は全額保証が効くらしいと聞いてよかった、と思い、でもこれから私はマザーに鍵をなくしたと謝罪せねばならず、お金は戻ってくるけど信用は戻ってこないな、と悲しくなった。
口頭ではうまく言えそうにないので紙に書いて謝罪文を読もうと思って書きながら、また泣いた。ホストマザーの前で泣かないように、今泣いておこうと思った。
深呼吸して、かつて鍵の置き場所と決めていた場所をもう一度みると、あった。
だろうな、と思った。なくしものはだいたいこういうものなのだ。
あーあ、と思って学校に行く。初日から遅刻は情けなさすぎる。
今日のモントリオール は一段と寒くて、雨が降っていて、学校に着く頃には指がパンパンだった。
学校で韓国人と日本人と仲良くなった。
私のような大学生が多いと思っていたけれど、30代から10代までいて面白い。
韓国語を習ってると話したら面白がってくれたので、覚えている防弾少年団の歌詞を諳んじてみた。大ウケだった。めっちゃいい曲なので聞いてほしい。
帰り道に3in1洗剤を買った。シャンプーからボディーソープまで一緒にできるやつ。
私はこれとドクターシーラボのクリームで日本にいるときより肌の調子がいい。
家に帰って洗濯をした。昨日勇気を振り絞って洗濯機の使い方を聞いたのだ。留学に来るまではまさか自分が洗濯機の使い方を聞くごときで緊張するなんて思ってもいなかった。
うまく出来たのでマザーがはちゃめちゃに褒めてくれた。正直すっごく嬉しかった。私は今年22歳である。
勇気が出てきたので、洗濯機待ちの間マザーに色々話しかけてみた。
「週末の予定は?」
「特にないの。モントリオールのどこにいけばいいと思う?」
「ウェブでWhere should I go Montrealで調べてみなさい。モバイルはなんでも教えてくれる。STMのアプリを入れておくといいわよ。ビオトープなんか綺麗だし、旧港の観覧車なんかもいいわね。公園もいいわ。」
私より先にステイしている男の子とも初めてまともに話した。
少し馴染めた感じがした。下手でも話せ、とは聞いていたけれど、実際色々自分の中で言い訳して話せなくなってしまっていた。
夕方、ブラジルから来た子が
「これからスーパーに行くけど、行く?」
と言ってくれた。
「行く!ちょっと待ってて!」
私より先にステイしてる男の子が色々教えてくれた。
正直あまり会話は通じていなかったし、緊張していて楽しいとかそういうレベルじゃなかったけれど、こっちに来て初めて自分に勝てた感じがした。
白菜はNAPPAで売ってることとか、穀物の種類が多いこと、ケールはかなり一般的な食べ物であること。スターバックスよりも美味しくて安いラテがあること、近所の博多ラーメン屋は広くて綺麗だけれどいつも空いていて、それはラーメン一杯が出てくるまでに1時間かかる上に美味しくないからだということ。
今日のモントリオールは異常に寒くて、雪が降った。4月にも雪降るんやなぁと思ったら、ブラジルとコロンビア出身の3人は目を輝かせていて、女の子なんか奇声をあげていた。
「コロンビアにもブラジルにも、めったに雪なんか降らないの!」
なるほど、と思った。雪って誰がみてもワクワクするものなんだと思った。
私は地元が降雪地帯なのもあって雪が降ってるのをみた瞬間今日は外に出るのをやめようと思ってしまうのだけれど、2人は夕食の後も外に飛び出していった。
明日郊外に行こう、という約束をした。
私は聞き取りが特に苦手で、その上3人はフランス語なまりが入っているので、私は彼らと会話をしにくい。でも返事をせねばならんと思い、
「行く!」
と言っておいた。
初めて連絡先を交換した。
一応文章で集合時間を確認した。
「それで間違いないよ。いける?」
と尋ねられた。
「もちろん!私は聞き取りが弱いから、確認したの。ありがとう!」
と打った。嬉しかった。こういうことなのかと思った。
留学で引きこもるのではなく、外に出て行くことは、物理的な意味だけじゃなくて、伝わらなくても気まずくても格好悪くても辛くてもなんとかコミュニケーションを取ろうとすることなんだと初めてわかった。知っていたけれど、初めてわかった。
今日の懸念事項は携帯の請求額が日本円にして一万円以上だったこと、手元の現金が底をついたこと、なぜか大学の履修登録が行われていたことだ。
不安は尽きないが、しかし明日も私は英語を話すのだ。