モントリオール留学#14

モントリオールでも三寒四温がある。

冷たい雨が降る寒い日があったと思えばパンツ一枚で歩くおじさんが散見されるような暖かい日もある。

「こんな寒い日があるならまだモントリオールはまだ春じゃないな。」

と先生が言っていたので

「日本では三寒四温の後春が来ます。」

 と言った。韓国人ママが

「韓国でも似たような言葉があるよ。サマンサーオン。」

 と教えてくれた。

 

 午後に日本人の同い年の子とビールを飲みに行った。

 歩道と車道の間にはいつの間にかテラス席が設けられていて、私たちはそこでタコスをつまみにビールを飲んだ。モントリオールの人たちはみんなご機嫌で、こんなに人がいたのかというくらいたくさんの人が歩いていた。日本に比べて晴れの日は眩しくて、太陽が近い気がする。

 

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 週の後半はまたグッと冷え込んで街は不機嫌だった。ホストマザーは朝からブツブツと

 「今日は雨ね。」

 と繰り返していた。

 午後みんなでプーティンを食べに行った。モントリオールB級グルメで、フライドポテトにチーズ、ブラウンソースをかけた物だ。美味しいとかの前に塩気が凄かったけれど、たくさん食べた。

 帰ってホストマザーにプーティンを食べた、と話すと

「食べちゃったの?」

 と聞かれた。

「私あれが大嫌いなの。フレンチフライは好きだし、チーズも好きだけれど、あれは一緒にする物じゃないしあんなソースをかけるべきじゃないわ。」

と眉をひそめていた。

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 今週でブラジル人の2人はブラジルに帰ってしまうらしい。私主催のSUSHI PARTYをした。

 モントリオールでは刺身が手に入りにくく、高価だ。考えに考えた末、カニカマ、コーン、ツナ、キュウリ、牛肉のしぐれ煮、錦糸卵、納豆を用意した。炊飯器がなくて、米を鍋で炊かなければならず、また米を鍋で炊くのも初めてだったし全てがうまくいくか本当に不安だった。けれど、みんなとても楽しんでくれていた。「君はいいお母さんになれるよ!」「”Delicious”って日本語でなんて言うの?」と何度も言ってくれて、本当に優しいなと感じた。私はいつかこの人たちにもらった目一杯の優しさと同じだけの優しさを、誰かに渡す義務があると感じた。

 ホストマザーに

 「日本語で”Thank you”ってなんて言うの?」

 と聞かれたので、

 「普通は『ありがとう』だけど、ご飯の後は『ごちそうさま』だよ。」

 と答えた。ブラジルから来たエリカが、

 「”Sama”が付いてるってことは敬語?誰に向かってありがとうって言ってるの?」

 と聞いて来たので、

 「『ごちそうさま』は作ってくれた人への感謝と、食べ物への感謝だよ。」

 と答えると、ホストマザーはいたく感心して、指を組んで神妙な面持ちで

 「ごちそうさまでした。」 

 と言っていた。その様子になぜか胸が震えた。

  余ったご飯でおにぎりを作った。ブラジルから来たマルコスが

 「知ってる『ニギリ』と違うな。僕が知っているのは上に魚が乗っている小さなやつだよ。」

 と言ったので、寿司とにぎりとおにぎりの違いについて説明するとみんな驚いていた。

 この「SUSHI PARTY」を開く前、「お好み焼きはどう?そうめんは?」と色々聞いてみたのだけれど、お好み焼きに関しては

 「うん、あぁ、オコノミヤキね、うん知ってるよ。」

 という反応だったのに対して、「寿司はどう?」と尋ねたときには

 「寿司!!リアルSUSHIだ!!やった!!」

 と大はしゃぎしてくれた。

 ホームレスに飼われている犬が他の犬に噛みつこうとして大騒ぎしている。ブラジャーにパンツのおばさんが歩いている。暖かくなってモントリオールは少しづつ夏の浮かれ気分の色味を帯びてきている。新しいスカートを買おうと思う。